口腔がんと口内炎の違い

口内炎と口腔がんの関係

口内炎と口腔がんの関係

口内炎が全てがんになるわけではない

お口にはさまざまな口内炎が発生しますが、これらが全て口腔がんに進展するわけではありません。もちろん、口内炎がある日を境にして急に口腔がん化するわけでもありません。

実は、口内炎が口腔がん化するのは、ごく稀なのです。

口内炎のうち、粘膜の細胞の修復時に、細胞の増殖能に異常が生じ、がん化する潜在能力を持ったものだけが、口腔がん化するのです。

しかも、がん化する潜在能力を有したからといって、いきなりがんになるわけでもなく、口腔がんになる前に、前がん病変という病態を経ます。前がん病変には、白板症(はくばんしょう)という白っぽいできもの、紅板症(こうはんしょう)という赤いただれたようなできものなどがあります。

口内炎ががん化するのには、5年以上という非常に長い年月がかかります。もちろん、前がん病変の全てががん化するわけではありません。白板症ががん化するのは、3〜5%程度、紅板症なら50%程度です。前がん病変のままで、がん化することなく経過することもあります。

このように口内炎ががん化する頻度はそれほど多くないわけですが、がん化するリスクを少しでも下げるためには、お口の中の環境を、口内炎が再発しにくいように整えることが大切です。

がん化する黄色信号に注意

口腔がんを早期発見するポイントは、『前がん病変に気がつくこと』『前がん病変ががん化しないように経過観察すること』です。

では、前がん病変かどうかをどうやって見分けるのでしょうか。

それは、粘膜の色の変化です。

白い変化(白板症)

赤い変化(紅板症

正常なお口の粘膜の色は、ピンク色です。もし、細胞が過剰に増殖を繰り返すと、その色が『赤色』や『白色』に変化します。そして形も変化します。

この変化の有無をチェックするわけです。

もし、前がん病変が見つかった場合は、がん化したことを早期に発見するために、3ヶ月に1度くらいのペースで、定期的に歯科医院や病院歯科で診てもらうようにしてください。

経過観察で早期発見

前がん病変ががんに変わるのを見逃さないようにするためには、経過観察を定期的に受けておくことが重要です。

写真に示す患者さんは、舌の横側にできた前がん病変を3か月おきにかかりつけ歯科医院でチェックしてもらっていた症例です。

最初は、42歳の時で、舌の横側に白い隆起をかかりつけの歯科医師が発見し、大学病院に紹介されました。大学病院では、病理組織検査を行い、前がん病変の一種である白板症であること確認しました。

その後、かかりつけ歯科医院で経過観察を受け、4年ほど経過した時点で、がん化したことに気づき、大学病院ですぐに手術を受けることができました。

早期に発見できたおかげで、手術の範囲も狭く抑えられ、負担の少ない切除手術で治療できたのです。

口腔がんの細胞はどうなっているのだろう

お口の粘膜が治る過程と、がんに変わる過程を解説いたします。

口腔がんはほとんどが扁平上皮がん

がん細胞は、顕微鏡で観察すると『扁平上皮がん』『腺がん』『上皮内がん』『基底細胞癌』などに分類されます。

このうち、口腔がんは、扁平上皮がんが占める割合が90%であり、口腔がん=扁平上皮がんといってもいいほどです。

扁平上皮とは、骨や筋肉、血管、脂肪などの結合組織という体の中の重要な組織を覆っている細胞層のことで、皮膚や粘膜を構成する上皮細胞です。

その厚みは雑誌のページの紙よりも薄く、バームクーヘンのような層構造になっており、結合組織を守っています。

お口の中の扁平上皮は、通常2週間ほどのサイクルで、新しい細胞に生まれかわります。

生まれ変わりのプロセスは、結合組織の直上にある基底膜というところの基底細胞から始まります。

基底細胞が細胞分裂を起こし、新しく生まれた基底細胞が上方へ向かって移動しながら、とげ状の有棘細胞、粒々のような顆粒細胞、薄い角化層へと変化し、最表層に到達します。

ここまでの過程が2週間なのです。

一般的によく言われる口内炎は、この扁平上皮に生じた傷とも言えます。

手足の傷ができた場合に、傷を治そうとする働きが生じるのと同じく、口内炎の傷を治すために、口内炎の真下にある基底細胞の分裂が開始し、新しい細胞が誕生し、最表層を目指して上がっていきます。この間もやはり2週間ほどです。

2週間経っても治らない口内炎は要注意と言われますが、その背景にはこのような理由があるのです。

基底細胞ががん化するプロセス

基底細胞が分裂するとき、まれに遺伝子にエラーが生じ、異常な基底細胞が発生することがあります。この異常な基底細胞が、分裂して増えていき、口内炎ががん化すると考えられています。

ですが、遺伝子にエラーが生じることは非常に稀です。しかも、生じたがん細胞を免疫機能によって取り除く機能もヒトの体には備わっています。

ですから、滅多なことではがん化しないのです。

とは言いつつも、やはり何度も口内炎が生じ、細胞分裂を繰り返すと、それだけ遺伝子にエラーが生じる確率が高まりますから、繰り返す口内炎には注意が必要なのです。

まずは日常的に口腔内をチェック

1年に1回は口腔がん検診しましょう

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